湿原と植生概要 湿原とはまさに陸と水の中間といえる環境に位置しています。 その特殊な環境の第一要因は水との関わりであり、その関わり方によって湿原には極めて特徴づけられた植生が存在します。 釧路湿原は赤沼の周辺等に高層湿原が認められますが、湿原の広い範囲(約80%)は低層湿原が占め、そこでは豊富に供給される栄養塩とミネラル、さらに高い地下水位のもと、ヨシ・スゲ及びハンノキを主体とした植生が広がっています。 | |  | | | | ヨシ・スゲは釧路湿原を代表する植生であり、共存しうる他の植物や、キタサンショウウオなど湿原生物の生活の場として貴重な生息環境を提供しています。 また、ハンノキも釧路湿原の代表的植生であり、湿原内で唯一林を形成する樹木として知られています。 しかし近年、ハンノキ林面積が1970年代後半から20年間で2.4倍になる(ハンノキ林の拡大について詳しく見る)など、考えられる自然変化の速度を越えた速さで増大しており、それは湿原周辺域での開発等の人為的影響と考えられています。このような急速な湿原植生の変化は、タンチョウやキタサンショウウオをはじめとする野生生物の生息環境の悪化につながり、更に国立公園としての風景・景観の劣化としてもその影響が現れはじめています。 | |
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釧路川流域では、1960年代から都市開発・農地開発が進み、湿原とその周辺部においても、宅地・農地造成、道路整備、河川改修など湿原開発がなされてきました。その結果、湿原面積が直接的に減少したほか、湿原内へ多くの土砂や栄養塩が流入し、ハンノキ林面積が1970年代後半から20年間で2.4倍になる(ハンノキ林の拡大について詳しく見る)など、質的にも急速に変化してきました。これらの影響を受けて、湿原特有の希少な野生生物の中には、個体数や分布面積が減少している種も見られます。
また、1930年代に食用・エサ用として摩周湖に持ち込まれたウチダザリガニ、1950年代に本格的な飼育の始まったミンクなどの外来生物が湿原内で繁殖し、その影響で在来生物が減少するなど、湿原生態系のバランスが崩れ始めています。
図 5-1.湿原域の土地利用・植生の変化 (図 5-2のデータに基づく)
出典:釧路湿原自然再生協議会、「釧路湿原自然再生全体構想〜未来の子供たちのために〜 2015年改訂版」、釧路湿原自然再生協議会運営事務局、2015年、P.33-34
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