
湿原のまわりにある浸水箇所(Lechs;水が流出する穴)を塞ぐために、湿原内でのダム造成や、急勾配の稜線を平らにして水の流出を防ぐ事業等を実施しています。例えば、ノイシュタット湿地におけるダムは、1997〜1998年に造られたもので、現場の泥炭を利用して主要部分は重機を使い、一部は人力による排水溝の埋め戻しも行なわれました。当初は植生への影響を考慮して、重機を入れない方針としていましたが、作業効率の面から重機を活用するようになりました。現在も湿原表面の植生を重機(地面に与える圧力を減少させるために、タイヤを追加し、草刈機が取り付けられた改造トラクター)で刈り取り、排水溝全体を埋める作業が行なわれています。

排水により水位が低下し乾燥化した高層湿原には、マツ・シラカバ等の木本植物が生育を始め、光・水分条件の悪化により湿原植生は阻害を受けるほか、シラカバは蒸散量が大きく湿原の水位低下をもたらすためこうした樹木の除去も必要な作業となります。手作業や、機械を入れての植生管理は多額の費用が必要となるため、水位の上昇が難しい限られた地域でのみ、冬期間の樹木の刈り払い、焼き払いがボランティアより行われています。
水位を上昇させることが難しい場所では、新しく生育する木本の生育を阻害するとともに、植生の管理を行なう目的から、羊の放牧を行っています。