自然再生釧路方式: 再生事業の考え方 |
再生事業の考え方 自然再生のための事業は、道路やダムなどのものを造る従来の公共事業とは異なり、生態系の広がりやつながりを重視しながら、自然に対する悪影響を時間をかけてていねいに取り除くことによって、自然が自らの力で回復していくことを手助けしようとするものです。このことを踏まえ、実際に自然再生事業を行っていく上で基本となる考え方を8つのポイントにまとめました。 調査事業の進め方について 1.目標の設定 事業対象地域ごとの状況に応じて、それぞれの具体的な目標を設定します。その際、めざすべき自然の状態を明らかにしておくために、多くの関係者にわかりやすいよう、目標となる年代や再生の目標像となる標準区(リファレンスサイト)を設定します。目標設定に当たっては、科学的(生態的、水管理技術)判断に加え、地域合意を重視します。 2.科学的調査・計画 生態系は複雑で不確定なことが多いため、全域及び事業地ごとに、分野横断的な科学的調査を実施します。そして問題発生の因果関係などの仮説をもとに、目標とする標準区の環境条件に近づけるように自然再生の計画を立てます。その際、生態系や周辺地域への影響に配慮し、ていねいな調査・工事を計画、実践します。 3.モニタリング・評価 一度に大規模な事業を行わずに、小規模な実験的事業から着手し、自然の回復プロセスに着目した継続的モニタリングを実施します。あらかじめ設定した再生評価項目により、標準区と対比しながら事業の効果を客観的に検証・評価し、仮説どおりの成果が得られなかった場合は事業内容を見直します。自然と対話しながら少しずつ事業をすすめるこのようなプロセスを「順応的管理」と呼びます。 事業推進の仕組みについて 4.関係省庁・NPOとの連携、市民参加 科学的調査や実行可能な事業の検討・実施のため、関係省庁・地元自治体・NPO・専門家など各方面の人々の連携・協力が重要です。とりわけ地元 NPO等と協働して、計画づくりや事業に取り組むとともに、計画から実施・管理の各段階で、幅広い市民の積極的な参加を促進します。 5.情報の公開と共有 調査・事業への合意形成の前提として、湿原や流域に関わるすべての情報の公開・共有を進めます。専門家・関係機関の協力に基づいて自然環境データベースを構築するとともに、インターネットによる公開・共有を進めます。また、目標設定から評価に至るすべての過程について公開の場で議論を重ね、ホームページの開設やニュースレター発行などにより、検討経過や事業内容等を公開します。 6.環境教育・普及啓発 傷つきやすく繊細な自然の成り立ちや、回復することの難しさ回復していく様子などを理解する最適な機械でもある再生事業のプロセスを活かし、環境教育を推進します。一方、流域全体で自然再生に向けた意識を高めていくために、シンポジウムなどを通じた湿原保全・再生への普及啓発や関心喚起に取り組みます。また市民参加や環境教育を進めるための「人」づくり、「場」づくりとそのネットワーク化を行います。 地域・生活とのかかわりについて 7.生活・なりわいの維持・向上 再生事業を進める上では、農業をはじめとする各種産業や生活への影響を最小にすることが前提になります。また、安全な飲み水の確保や、心安らぐ景観の維持・向上などにつなげていくことも重要です。一方で、湿原に負荷をかけない、環境と調和した農林水産業やライフスタイルへの転換を促進していきます。 8.地域の魅力・活力の向上 再生事業の実施を通じて、湿原と共生する新たな地域イメージづくりとその発信に努めます。そのため、各種開発の計画段階から環境配慮を織り込むよう求めるとともに、エコツーリズムや環境保全型産業を育成・推進します。一方、国立公園区域・公園計画見直しなどにより、保全の強化と質の高い利用の推進を図り、地域の魅力向上につなげていきます。 |
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