自然再生事業について: 世界の自然再生[ドイツ 1] |
ドイツの事例 ディープホルツ低湿地帯BUNDプロジェクト ![]() 水文環境管理を中心とした湿原再生 ドイツ北西部ニーダーザクセン州にあるディープホルツ低湿地帯において、泥炭採掘等で消失した湿原を復元し、昔ながらの湿原風景と湿原生態系を取り戻し、保全することを目的とした、ドイツ環境自然保護連盟(BUND)のプロジェクト。高層湿原や低層湿原、中間湿原、砂地、内陸の砂丘などの隣接するビオトープ(=生物生息空間)を守り、絶滅の危険にある動植物のために、本来の自然に近い生息環境をつくりだすことを目的として活動しています。 再生対象となっている湿地の事例
活動組織 ドイツ環境自然保護連盟(BUND ) ドイツ環境自然保護連盟(BUND)はドイツ最大の自然保護団体で、40万人の会員を有し、ドイツ全土にある支部を拠点に自然エネルギー利用、公共交通利用、有機無農薬の作物づくり等を推進するための教育活動やキャンペーン活動を行っています。 BUND支部は、ディープホルツ低湿地帯がある州や郡と、自然保護区の管理契約を結び、湿原再生のための植生管理、動植物のモニタリング調査や具体的な保護対策の提案、普及啓発活動等を受託事業として行っています。保護すべき湿原は州をまたがり、ニーダーザクセン州とその南西部に隣接するノルトライン・ヴェストファーレン州に及んでいるが、両州と管理契約を結んでいるため、BUND支部による保護活動は行政区画の制約を受けることなく行なわれています。 湿原の植生管理 1.水文環境の修復 湿原のまわりにある浸水箇所(Lechs;水が流出する穴)を塞ぐために、湿原内でのダム造成や、急勾配の稜線を平らにして水の流出を防ぐ事業等を実施しています。例えば、ノイシュタット湿地におけるダムは、1997〜1998年に造られたもので、現場の泥炭を利用して主要部分は重機を使い、一部は人力による排水溝の埋め戻しも行なわれました。当初は植生への影響を考慮して、重機を入れない方針としていましたが、作業効率の面から重機を活用するようになりました。現在も湿原表面の植生を重機(地面に与える圧力を減少させるために、タイヤを追加し、草刈機が取り付けられた改造トラクター)で刈り取り、排水溝全体を埋める作業が行なわれています。 2.進入樹木の成長抑制・伐採作業 排水により水位が低下し乾燥化した高層湿原には、マツ・シラカバ等の木本植物が生育を始め、光・水分条件の悪化により湿原植生は阻害を受けるほか、シラカバは蒸散量が大きく湿原の水位低下をもたらすためこうした樹木の除去も必要な作業となります。手作業や、機械を入れての植生管理は多額の費用が必要となるため、水位の上昇が難しい限られた地域でのみ、冬期間の樹木の刈り払い、焼き払いがボランティアより行われています。 モニタリング調査・保全対策の提案 UND支部は、湿原の保全対策についてのモニタリング調査を行い、具体的な保全対策を州や郡などの行政へ提案しています。また、ビオトープのデータ(主に動物相や植物相)を収集し、データベース作成、管理を行なっており、地理情報システム(GIS)を利用した湿原現況の図化も行なわれています。 普及啓発活動 BUND支部は、湿原再生の必要性の理解を多くの人々から得ることを普及啓発活動の目的とし、事業実施の経緯や理由・必然性等といった根本的な部分を、何度も繰り返して人々に伝え、どのように目的を達成しようとしているかを人々に紹介することに重点を置いた活動が行なわれています。 他団体や組織等の連携 自然保護・景観保全財団、州、郡は、一部EUや連邦政府環境省の補助金を活用して、4000ha以上の湿原、耕作地を購入し、ディープホルツ低湿地帯の湿原保全の基盤をつくってきました。BUND支部では、上記組織のほか、自然保護機関、農業機関、都市や地方自治体、農業、景観保護のための放牧農家・団体等、湿原に関わる様々な団体・個人と連携し、協力を得ながら湿原の再生・保全活動を展開しています。 [公式サイト] BUND-Projekt Diepholzer Mooniederung |
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