自然再生事業について: 世界の自然再生[オーストラリア]  
オーストラリアの事例 クーラーガング湿地再生プロジェクト


多様な主体の連携による自然再生

クーラーガング湿地は、オーストラリア東南部の海岸、ニューサウスウェールズ州のハンター川河口部に位置しています。プロジェクトは、漁業資源の回復を求める水産会社のサポートにより開始された3ヵ所計1,560haの河口湿地の再生をめざすものです。鉱物採取、都市開発、道路整備など過去200年の開発事業によってダメージを受けたハンター川河口域の湿地環境と野生生物生息地および自然資源の回復・修復事業の実施(水路や堰の建設による湿地環境の再生)に加え、ボランティア活動と連携した植林やモニタリング等、多彩な活動が展開されています。啓発目的の歩道、自転車道、カヌー水路や旧学校長宅を利用したインフォメーションセンター等、来訪者向けのハード・ソフトもユニークなものです。


経緯と概要

1993年、ニューサウスウェールズ水産会社のサポートによって、3カ所でプロジェクトが設立されました。アッシュ島、トマーゴ、ストックトンの3地区です。ハンター川河口域には、すでにクーラーガング保護区(ラムサール条約登録湿地)が設けられています。クーラーガング保護区は、面積2,926haで、マングローブ林、塩湿地、砂丘地、淡水湿地、干潟、モクマオウ湿地林、熱帯雨林など多様な湿地で構成され、豪州に生息するシギ・チドリ類の25%が確認される重要な渡り鳥の生息地です。


アッシュ島地区

面積は約750ha、そのうち100haはクーラーガング保護区の一部で、全域がニューサウスウェールズ州公共事業局の所轄地になっており、ハンター川流域管理トラストが、本プロジェクト実施のために借用しています。本地区では、塩湿地、淡水湿地の回復、修復、植林による湿地林の回復、持続可能な湿地環境の利用手法の実験、環境教育、普及啓発活動の実施、自然観察、レクリエーションのための遊歩道の設置などに取り組んでいます。本プロジェクトのオフィスは、旧学校長宅を修復して設けられたインフォメーションセンターに置かれています。


トマーゴ地区

ハンター川左岸域に位置する約800haの砂丘地で、当該地区の約50%はトマーゴアルミニウム会社の所有地で、残りはニューサウスウェールズ州国立公園・野生生物局の所轄地です。トマーゴアルミニウム会社が砂を採集した跡地の修復事業が実施されています。


ストックトン地区

ハンター川河口に架かるストックトン橋の右岸砂丘地の10haで、大部分はニューサウスウェールズ州国立公園・野生生物局の所轄地。シギ・チドリ類の重要な生息地として、修復事業が進められています。


組織

本プロジェクトは、ハンター川流域管理トラストと土地・水資源保護局、双方の事業としても位置づけられています。プロジェクトの運営委員会は、主要な7つの資金援助団体と2地域団体の代表によって構成され、事務局は7名のスタッフによって運営されています。オフィスは、前述のアッシュ島地区にあるクーガーラング湿地インフォメーションセンターに置かれています。


資金

基本基金は、運営委員会を構成する9団体(ハンター川流域管理トラスト、ニューサウスウェールズ水産会社、ニューサウスウェールズ土地・水資源保護局、河口管理プログラム、ニューサウスウェールズ州国立公園・野生生物局、ニューキャッスル市評議会、ポートステファン市評議会、ニューキャッスル大学、オーストラリアエネルギー、ニューキャッスル港湾会社、漁業調査共同体など)からの寄付によっています。


おもな活動

アッシュ島地区においては、ボランティア活動と連携し、植林による湿地林の復元、修復事業が進められています。また水路や堰を設置し、水位の調整を試みながら淡水湿地および塩湿地の回復、修復事業を進めています。あわせて、これらの経過についてのモニタリング調査もボランティア活動と連携し取り組まれている。地区内には、本プロジェクトのオフィスが置かれるインフォメーションセンター(旧学校長宅)があり、湿地林の修復に使われる苗木の育成、遊歩道の造成、データベースの構築などに取り組んでいます。
さらに、かつて農業用地として利用されていた(放牧など)湿地では、湿地環境への影響の少ない放牧や農耕が試みられ、ここでの生産物は、本プロジェクトの財源として活用されるだけでなく、湿地環境の持続可能な利用についての普及啓発活動の一つとしても位置づけられています。
トマーゴ地区では、砂丘地からの砂採取後、地形の修復と湿地林の回復を求めて、水路や沼沢地を造成し、数年ごとの修復サイクルを生かした植林・植栽事業を実施し、湿地林、湿性草原の回復を試みています。これらの湿地林、湿地草原は、コアラの採食地、回廊としても利用されつつあります。また、このような回復、修復事業についての普及啓発を求めて、遊歩道、サイクリングロード、カヌー用水路を設けて活用しています。
ストックトン地区では、ストックトン橋に近接するマングローブ林と結ぶ右岸河口域に人工砂丘地を、また、水鳥の生息地として期待できる水路、沼沢地を造成し、あわせて植林による湿地林の回復を試みて、隣接する車道との緩衝帯の構築を図っています。また、水鳥観測用の施設及び観測用遊歩道を設け、普及啓発活動に活用している。現在、多くのシギ・チドリ類が飛来し、ペリカン類の生息も確認されています。

[公式サイト] KOORAGANG WETLAND REHABILITATION PROJECT

 

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