釧路地方の霧発生の仕組み 右のグラフは、釧路市と、札幌市及び東京都の月別平均気温を比較したものです。特に夏が顕著ではありますが、釧路市は、1年を通してその気温が低いことがよくわかります。 1960年〜2002年までの釧路市の霧の発生日数については、ほぼ毎年100日以上となっており、釧路市が、「霧の街」と呼ばれる由縁と言えます。 釧路では霧の発生日数が年間平均100日以上と大変多いことで知られていますが、なぜそんなに霧が発生するのでしょう? それは釧路の位置する立地条件、海流、気団が複雑に関係して「移流霧」という種類の霧を発生させる条件が見事に揃っているためです。
日本付近を流れる海流と密接な関係 釧路の海霧を理解するためには、まず日本近海における海流と、気団を理解する必要があります。 日本近海には主なものとして親潮、黒潮、対馬海流、リマン海流の4つの海流が知られています。 これらの海流は、赤道付近から北に流れてくる暖かい海水(暖流;黒潮と対馬海流)と北極圏から南に流れてくる冷たい海水(寒流;親潮とリマン海流)に分けることが出来ます. このうち暖流の黒潮と寒流の親潮が釧路の霧に大きく関わっています。
| |  | 海流の寒暖と南風が霧を発生させる 一方で、夏期になると、釧路地方には湿った南風が吹き込むようになります。これは日本に夏をもたらす「太平洋高気圧」が大きく張り出してくるためです。高気圧からは常に時計回りに大気が流れ出すため、釧路には南風が吹きます。この南風はまず、暖流である黒潮上空を通過する際に暖められ、「暖かく湿った空気」となります。そして北緯40度以北(岩手県北部付近)にて寒流である親潮上空を通過する際に少しずつ冷やされます。空気中に存在できる水蒸気の量は、空気が暖かいほど大きく、冷たいほど小さいです。そのため、寒い日に息が白くなるように、暖かく湿った空気が急激に冷やされると、その中の水蒸気は、行き場を失って、霧となります。 釧路地方の霧は、海上で発生した霧がそのまま南風にのって到達したものです。海で発生した霧のため「海霧」と呼ばれます。また、発生した場所をおよそ岩手沖とすると(実際には、空気の移動に伴って徐々に発生していると思われますが)、岩手沖から釧路まで数百キロの道のりを霧が移動していることになります。 | |  | |
前の記事:釧路地方の気象条件 | 「湿原を知る」のメニューに戻る | 次の記事:湿原とその周辺域の水利用