作成にあたっての考え方

この全体構想を作成するにあたって、釧路湿原自然再生協議会が考慮したことを以下に述べておきます。赤字は、策定10 年後の2015 年の点検・見直しにあたっての考え方です。

 
(1)構想の基本構成

全体構成では、自然再生推進法を踏まえつつ、以下のような構成で記述しました。

○ はじめに
この構想の目的を短く述べています。
○ 第1 章 自然再生の取り組みに至る経緯と背景
釧路地方の自然と歴史についての概要、自然環境が抱える課題、自然再生事業に至る取り組みの経緯について説明しています。構想の背景についての解説です。
10 年目の見直しでは、10 年間での自然と社会の変化、協議会の取り組みとその成果、課題について追加しました。具体的な取り組み事例についても、6 〜 16 ページで紹介しています。
○ 第2 章 自然再生の基本的な考え方と原則
「自然再生」に関する定義と、行なっていく上での基本的な原則(ルール)を記述しています。どういう取り組みが「自然再生」にあたるのかを判断するのが協議会の役割の一つなので、そのための原則を示しています
○ 第3 章 自然再生の対象となる区域
この全体構想に関わりのある区域について記述しています。
○ 第4 章 自然再生の目標
自然再生は目標を明確にすることが重要なので、「目指すべき姿(イメージ)」と「流域全体で達成したい目標」について明確に示せるように記述しています。
10 年目の見直しでは、脚注での解説を追加したほか、5 章に含まれていた「流域全体での評価項目」について、ここでまとめて整理しました。
○ 第5 章 目標達成のために実施する施策と評価方法
目標を達成するために実施を計画している具体的な取り組みを6つの分野に分けて記述しています。それぞれ、どんな手法でどんな課題に取り組むのか、その成果をどのように評価するのかを整理してみました。実際に行なわれる取り組みをイメージしやすくしています。
10 年目の見直しでは、地域との関わりをより強くする方策を検討するため、新たに「自然再生を通じた地域づくりの推進」を追加して取り組みを7 分野とし、「自然再生の普及と環境教育」を各施策を円滑に進めるために横断的に関わる分野として位置づけを明確にしました。また、各分野について、10 年間で得られた新たなデータや現況図を整理して追加しました。
○ 第6 章 役割分担
協議会に参加している委員や行政機関が自然再生にあたる上でどのような役割分担をするかを記述しています。なお、協議会委員の構成や小委員会については別資料に記載しています。
(2)作成にあたって留意したこと

作成にあたっては、次の点に特に留意しました。

・この構想だけを読んでも、釧路での「自然再生」について分かるように、背景・現状・考え方について、しっかりと記述する。
・客観的な記述となるよう、正確で科学的な表現を用いる。
・一般市民にも理解しやすいように、用語や表現を分かりやすくする。
・各施策の出発点である「全体の」構想であることを踏まえて、関係者の理解が得られる表現に配慮する。
・長期的政策であること、環境教育的役割を持つことも考慮して、「夢のある」「先進的な」表現・内容にする。

また、自然再生協議会に参加している構成員や、地元市町村の住民が参加した地域検討会から出された意見を整理して、以下のことも留意すべき重要なポイントであると考えました。

・「再生」という言葉の定義、説明が必要である
「自然再生」という言葉は一般になじみがなく、定義や説明を丁寧に入れておかないと理解が進みません。特に「不自然で人為的なイメージ」、「無理に過去に全てを巻き戻すようなイメージ」を持つ人が多かったので、誤解については取り除けるように工夫を心がけました(2 章)。
・トータルな環境政策としての姿を持つことが重要である
あいまいでスローガン的にしか読まれないのでは、全体構想としてわざわざ書く意味がありません。ここで挙げられたことを責任持って進めていくことの担保がなければ「絵に描いた餅」になってしまう、という懸念の声が聞かれました。本当に「実効性がある形」、例えば法律や政策の転換・対応も含めた総合的な施策を希望する声も多くありました。
・地域住民の生活・経済活動の担保がなされている必要がある
地域に住む人たちからは、生活や産業を無視した事業展開になるのではないかという不安の声が聞かれました。また地域外の人からも、地域に不利益があると長続きしないので、その補償などに配慮すべきという意見が聞かれました。特定の人だけに負担があってはならないのは当然ですが、そのことが明確に記述されている必要があります。
・農地との線引きをするルールを明確化すべきである
農地と湿原、農地化と湿原化は排反的なものなので、過去の農業事業との政策的な整合性を心配する声が多く聞かれました。どのような姿勢・ルールで取り組むのか、詳細には個別の事業に譲るとしても、基本的考え方についてはある程度示す必要があると考えました。

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