第4章.自然再生の目標

(1)目指す姿(1)

この自然再生が目指すのは、

この地域に本来生息している生きものたちが絶滅することなく生きていける環境(2)、そして私たちの暮らしに豊かな恵みをもたらす「水と緑の大地」を取り戻す(3)
ことです。

◇思い描くイメージとしては... ?

 タンチョウやシマフクロウ、イトウ(4)などがすむ多様な生命の環、 川から海にわたる豊かな自然の幸、美味しい飲み水、 雨が降っても土砂で覆われることの少ない水辺、安らぎや感動を与えてくれる湿原景観・・・。
 こうした豊かな恵みを受けながら、地域の人々が暮らし、子どもたちが自然について学ぶ・・・

◇それは具体的にはいつ頃のイメージ... ?
 急速な悪化が進む以前の、国際的に価値が認められたラムサール条約登録前のような湿原環境(5)を一つの姿とします。

そのような環境を取り戻していくことは大変なことで、50 年、100 年といった時間がかかるかもしれません。しかし、その実現のために湿原に関わる多くの人々が協力し、行動していくようになることが、目指している姿なのです。

(1) ここでは、多くの人にイメージしやすい「目指している姿」を言葉で表現してみました。また、具体的な生きものや時期について確認したい人のために、別の表現もしています。この目標は、必ず達成しなければいけない評価対象というより、みんなで持つ「夢」の姿と考えています。
(2) さまざまな生きものたちがお互いに関わりながら形づくっている自然環境を大事にすること(生物多様性の保全)を示しています。
(3) 生物多様性は、食料や水の供給、気候の安定などを通して、私たちの暮らしに欠かせない恵みをもたらしています。近年その内容がよりくわしく整理され「生態系サービス」(第1章参照)と呼ばれるようになっています。
(4) ここでは釧路湿原の本来の姿のより象徴的な生きものの名前を挙げました。タンチョウは湿原に営巣するツルで、明治期には絶滅の危機に瀕していましたが、近年は回復傾向にあります。シマフクロウは、北海道生態系の頂点となる猛禽類の一つで、過去には釧路川水系の上流部で確認されており、今後の定着が期待されています。イトウは大型のサケ科淡水魚類で、釧路川水系の一部の河川に現在も少数確認されています。
(5) ここでは、目指す「目標像の例」として、ラムサール条約登録時(1980 年前後)の湿原を挙げています。すでにこの当時に改変が進んでいる環境があったり、変化の要因が内在していたりしており、単にその後の改変を再生して戻すという意味ではありません。

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